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【体験談】エピソード002 診断は敗血症性ショックによる急性多臓器不全

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※ご注意

この記事は息子が人食いバクテリアと呼ばれている劇症型溶連菌に感染した際の実際の体験を、記憶、LINEのメッセージ、写真などを元に書いたものです。

当時の私がそうであったように、人食いバクテリアに感染したご本人、ご家族、ご友人などは、わらにもすがる思いで回復した例が無いか探していると思います。

そんな方々がこの記事の例に少しでも希望を持てれば幸いと思い、息子の了承を得て公開することにしました。

私自身は医療関係者ではないため、治療方法、予後の処置、リハビリなど不正確な部分も含まれる可能性がありますこと、ご容赦願います。

特に治療やリハビリについては患者さんごとに状況が異なるため、この記事に書いてあることはひとつの症例であり、全ての人食いバクテリア感染者に有効なわけではないと思います。

実際の治療やリハビリの方針等は担当のお医者様や理学療法士の方と相談して頂く方が良いと思います。

なお、息子が今後、公開を拒むようなことがあれば予告なく非公開にすることがあります。

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敗血症性ショックによる多臓器不全

面談室の待機時間が異常に長く感じる。

18時過ぎに担当の医師が面談室に来て、息子の状態と治療方針を教えてくれた。

その時に言われたことは、

・状態は非常に悪い

・今すぐに命の危険ということではないが危ない橋の上にはいる

・吸入した酸素を体内で有効に使えておらず乳酸値が下がらない

・血液の凝固全身の血管で起こってしまっている(DIC)ため、凝固成分を使い切ってしまっていて、サラサラ過ぎる状態

・そのため肺からも出血が見られる

・突発的に大きな出血が発生すれば一気に傾く可能性が高い

・現在は輸血により出血しにくい血液の状態にすることを必死にやっている

・心拍も150程度でずっと無酸素状態の運動を続けているような状態にも関わらず血圧が60台と低い

・これは全身が酸欠のため全身で血管を拡張しているため

・酸欠の際に血管を拡張するのは正しい生体反応だが、全身で起こると全身の血流が不足し酸欠が解消しないため、心臓はもっと頑張ろうとする、血管はもっと拡張しようとする

・その結果が心拍数が高いのに血圧が低いという現象

・さらにこれが続くと心臓の戻る血液も減少し、心臓が弱ってくる

・このような状態で循環系が今は大きく崩れているのでそこを正常に戻すのが最優先

・なので今は体温を下げて、血圧を上げるように治療している

・とにかく全身が酸欠の状態なので、筋弛緩剤を打って余計な酸素を消費ないようにしている

・血液検査、心拍、体温、血圧などは意図した方向に動きつつあるためモニタリングしながら抗菌薬を点滴しながら様子見

・菌の種類は特定できていないが、これはすでに最初に搬送された病院で特定の手続きを進めてくれているので、それを待つしかない。

・特定され次第その菌に特化した抗菌薬に切り替えるが、今は全般的に効く抗菌薬を使用している

・現在医療用の麻薬を点滴しているので、本人は苦しんではいないはず

・予後の状態も考えながら出来得る限りのことをやっている

心臓、肺、肝臓、腎臓+血液ってほぼ全ての臓器が不全の状態って尋常ではない。

多臓器不全でもこんなに悪いのは自分の周りでは聞いたことない。

今すぐ命の危険はないと言っているが、ギリギリのところにいることは間違いないと思った。

医療用麻薬を使わないといけないっていうことは、末期ガンの患者と同じじゃないの?とか良くないことが頭によぎる。

予後の事とか考えなくて良いからとにかく命を助けてくれ、と思った。

※後に予後がいかに大切かを思い知る事になるが。

寝ている息子と対面

医師の説明のあと、鼻、口、首、腿などに挿管された変わり果てた息子と対面した。

血液がサラサラになりすぎたせいで、全身で内出血を起こしており、手足は紫色になっていた。

全身の酸素の消費を抑えるためなのか、これ以上発熱しないように青いシートで外部から強制的に冷却して何とか体温を下げようとしている、と医師が言っていた。

足の内出血もひどく、皮膚を圧迫した時、通常なら肌の色が黄色っぽい色から従来の色に1秒とかからず戻るが、息子は数秒を要した。

それだけ、血流が悪くなっている証拠だということだった。

これは覚悟しなければいけない、と思った。

医師が、先ほど説明してくれた内容をなぞるように、心拍、血圧、体温等のモニタリング情報を説明してくれ、ちょっと前より数値は良くなってきていると言ってくれたのが救いだった。

でも3日前は熱が下がって元気になりかけていた息子が何でこんな状態になっているんだ。

注射苦手だったのにこんなにいっぱい管を刺されて痛かっただろうな。

等々、頭の中は色々な思考や感情がぐちゃぐちゃになっていた。

本来なら病院の面会時間は20時までで、今日はこの状態のまま急激に良くはならないだろうということ、下の子を自宅で妻の両親に預けていたため、緊急連絡先を病院に伝え帰宅することになった。

眠れない夜

タクシーで最寄りの駅まで行き、妻と2人でなんでこんなことになってしまったんだ、と思いながらも、きっと回復すると信じて自宅へと向かった。

自宅の最寄駅からの道中、妻は息子に冷たくしてしまった過去の出来事を思い出して泣いていた。

「回復したらまた一緒に思いっきり遊ぼう」と言って自分も涙をこらえた。

改めて職場の上司には状況を連絡し、長期戦になる旨を伝えた。

二つ返事でもらった「仕事のことはこっちに任せて、ご家族最優先で」という言葉は本当に涙が出るほどありがたかった。

一生忘れないと思う。

実はこの時、出向中の身で出向先、出向元どちらの上司にも連絡したのだが、どちらの上司も同じように言ってくれたので、本当に助かった。

自宅に戻った後、下の子の面倒を見てくれていた妻のご両親にお礼を言って、息子の状況を伝えた。

義理のご両親も当然心配していた。

と同時に、今日は2人の子供を病院に連れていく為にヘルプで来てもらっていただけなので、泊まる準備はしておらず翌日の朝、義理の両親は帰ることになった。

寝室で敗血症や敗血症性ショックなどの論文や治療などを読み漁ったが、全然ポジティブなものは無く悪い症例ばかり。

検索しなければ良かった、と思った。

息子の状態の急変を告げる電話がならないことを祈りながら、ひたすらにポジティブな情報を探しまくったが見つけられなかった。

そして眠れぬ夜が明けた。

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