※ご注意
この記事は息子が人食いバクテリアと呼ばれている劇症型溶連菌に感染した際の実際の体験を、記憶、LINEのメッセージ、写真などを元に書いたものです。
当時の私がそうであったように、人食いバクテリアに感染したご本人、ご家族、ご友人などは、わらにもすがる思いで回復した例が無いか探していると思います。
そんな方々がこの記事の例に少しでも希望を持てれば幸いと思い、息子の了承を得て公開することにしました。
私自身は医療関係者ではないため、治療方法、予後の処置、リハビリなど不正確な部分も含まれる可能性がありますこと、ご容赦願います。
特に治療やリハビリについては患者さんごとに状況が異なるため、この記事に書いてあることはひとつの症例であり、全ての人食いバクテリア感染者に有効なわけではないと思います。
実際の治療やリハビリの方針等は担当のお医者様や理学療法士の方と相談して頂く方が良いと思います。
なお、息子が今後、公開を拒むようなことがあれば予告なく非公開にすることがあります。
神頼みならぬ仏頼み
昨夜から今朝にかけても緊急呼び出しのコールは無かったことに安堵した。
今、自分にできることは何かと考えても何も思いつかなかったので、面会ができない午前中に無病息災、厄払い、病気治癒などのご利益があるお寺にお参りをしてきた。
今更ながら、私は前厄だったことに気付き、お祓いをしてもらいつつ、息子の病気治癒をお願いしてお札とお守りを買った。
お札は自宅の仏間に置き、お守りは病室に置かせてもらえないか、病院に掛け合うつもりで。
私自身はこれまでもまったく信心深くはなかったが、息子に万が一があった時、後悔したくないと思い、神頼みでも仏頼みでもできることをやろうということでお参りした。
この日以降、妻と毎日お参りをして息子の回復をお願いした。
少しずつでも良くなってきているのか?
午後になり、面会の時間開始と共にICUの病室へ。
看護師さんに挨拶をして、お守りを病室のどこかに置けるか聞いてみた。
こちらは快諾してくれて、ベッドの枕元に置いてもらえた。
この日から、息子が使っていたタブレット端末にAmazonプライムでダウンロードした動画を流した。
元気な時に息子が好きだったドラえもんやミニオンの動画を流して音だけで聞いて楽しいことを思い出せば本人の気力も湧くんじゃないかという非科学的な理由だけど。
これで少しでも息子に良い影響があれば良いのだが。
その後、その日の担当医師(*1)に昨日からの経過と現在の状態を聞いてみた。
医師から言われたのは
・依然として予断を許さない状態が続いている
・昨日の状態を維持できている
・血圧を上げる薬も減らした状態で血圧が出るようになってきたのは良い点
・乳酸値は4mMol/Lで正常値2mMol/L以下を考えるとかなり高い
・最後の採血ではやや下がったが、上下するものなので1回では何とも言えない
・pH調整剤で体内のpHはコントールしているので乳酸で体内が酸性に傾いて内臓を損傷するなどの心配はない
・敗血症性ショックのDIC症状などでできた血栓の影響で手足の末端に血液が巡らずに壊死してしまう場合があるため注意深く診ているが見えてくるのは4,5日してから
・おでこに付けているのは脳血流量や血流の酸素飽和度を計測するセンサ(この日からおでこに付いていた)
そして、昨日あたりから気になっていたのが息子の足の指の色。
右足の第3趾(中指)、第4趾(薬指)、第5趾(小指)が紫色になっており、血の巡りが悪いのは素人の私でもわかるほどだった。
たとえ先端でも壊死すると、足のどこあたりから切断しないといけないのだろう?とか嫌な思考ばかりが頭をよぎる。
希望を持てた先生の力強い言葉
息子の回復を信じていたものの、昨日あたりから私にはある疑念があった。
それは、今の息子の治療が「延命治療」なのではないか、という疑念。
医療用の麻薬を投与されていることや、状況によってはエクモ(ECMO)も使用する、といったことを聞いていたから、というのが大きな理由。
というのも、医療用麻薬として有名なモルヒネ(息子が投与されていたのはモルヒネではないが)は末期ガン患者が投与されるものだし、エクモはコロナで無くなった志村けんが治療の最後に付けていた人工肺だったので、これらを使うということは、死を目前にした状態ではないかと思ったから。
後に、医療用麻薬もエクモもしっかりと回復を目指した治療の中で使われるものだということがわかるのだが、この時の私の浅い知識では誤った認識だった。
そこで、妻が席を外したタイミングで医師に聞いてみた。
私:「自分も覚悟をしたいので論文等で語られる一般論で良いので教えて欲しい。今の治療は息子の回復を目指しているものなか、少しでも生き長らえる延命治療の性質が強いのか、どちらでしょうか?」
医師は即答してくれた。
医師:「当然回復を目指す治療です。少なくとも私達は100%元通りの彼になると信じて治療をしています」
この力強い言葉に、私は本当に救われて、涙声で「ありがとうございます。よろしくお願いします」としか言えなかった。
後で、失礼なことを聞いてしまった、と猛省した。
少し時間を空けて担当の医師が変わった後、その医師も「今の状態で循環系が安定していれば4,5日くらいで少しずつ上向いてくるはずです」と言っていた。
医師達のこれらの言葉を信じ、息子の回復力を信じて待とう、とポジティブに考えることにした。
息子の姿にショックを受ける家族
この日も眠っている息子の写真を撮った。
両親と兄弟には送ったが、顔はむくみ、たくさんの管が繋がり、元気な時の面影がまったくない息子の姿にやはりショックを受けていた。
さらに手足も内出血で紫色だから余計にショックだったと思う。
妻も面会には来るものの、息子のその姿を見ているのが辛い、と言っていた。
息子には「また元気になって一緒に遊ぼう、車で出かけよう」と何度も声をかけた。
少しでも息子を死の淵から引き戻せるなら、と思って。

入院3日目の息子
医師が推測した感染した菌
この時、まだ細菌の画像診断が出ていなかったため確定はしていなかったが、担当の医師が典型的な症状であることからほぼ間違いないと思うと言って感染した菌の推測を教えてくれた。
この時初めて、劇症型溶連菌という存在を知った。
劇症型溶連菌でググって見ると恐ろしい感染症であることがわかってまた落ち込んだ。
参考:劇症型溶血性レンサ球菌感染症とはhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/341-stss.html
上記、国立感染症研究所のページによると”約30%が死亡しており、きわめて致死率の高い感染症である”と。
医療が発達したこのご時世に30%も死ぬ感染症があるのか、ということにまず驚いた。
そして、色々な治療の論文を読み漁ったが、”多臓器不全に移行し、不全となった臓器数が増加するに従い、致死率も上昇し4つ以上の臓器不全の場合7割が死亡した”という論文は本当に読まなきゃ良かったと思った。
しかも、大抵が数日~1カ月以内に死亡すると書いてある。
本当に見なきゃ良かった。
この日は風呂に入って1人になったタイミングで涙がこらえきれなかった。
妻や下の子に泣いているところを見せないように、落ち着いてから風呂から上がった。
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